粉瘤(アテローム)の定義とは
袋状の組織が皮膚の下にでき、そこに垢や皮脂といった老廃物がたまったもので、アテロームや表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)と呼ばれることもある良性の腫瘍です。はじめはあまり目立たず、触れると小さなしこりがあるように感じます。この状態では特に問題はありませんが、粉瘤はサイズが大きくなったり、独特の臭いを生じるようになったり、細菌感染などにより炎症を起こすことがあります。炎症を起こして熱を持ち、化膿して強い痛みや腫れを生じた場合には、できるだけ早く膿を出す処置を行う必要があります。
ニキビだと勘違いされることがありますが、粉瘤はニキビと異なり自然治癒することはありません。ニキビは毛穴が詰まったものですが、粉瘤は袋状になった腫瘍で袋状になった組織を完全に除去しない限り治すことができません。
粉瘤について動画で解説しています。
当院では数センチあるものでも当日手術を行っております。手術自体は5~10分程度で、長くても20分以上になることはほとんどありません。
炎症のある粉瘤の場合にも当日手術を行っています。
粉瘤の治療
切開法またはくりぬき法により腫瘍を摘出します。局所麻酔を行う際の注射針が刺さる時の痛みを軽減するために極細針を使用しています。
また局所麻酔後に患者様の状態によっては、生理食塩水・局所麻酔を注入することにより、皮膚と周囲組織の剥離(hydrodissection)を行います。
治療法1:くりぬき法
特殊な器具で粉瘤に小さな穴をあけ、そこから粉瘤の内容物を絞り出した後に、しぼんだ粉瘤の袋を抜き取る方法です。出来るだけ小さな切開により腫瘍を摘出することが出来ます。また手術時間も短縮出来ます。
手術時間は5分~20分です。
Step1
腫瘍周囲に局所麻酔を行います。
Step2
トレパンまたはメスを使用し、皮膚を小さく、くり抜きます。
Step3
内容物を排出します。
Step4
被膜を丁寧に取り除きます。
Step5
十分に止血を行い、創部の閉創を行います。
治療法2:切開法
腫瘍の直上に切開を加え、粉瘤を丸ごと切除します。
再発率も低く、切開法による手術を選択させて頂く場合もあります。
Step1
腫瘍周囲に局所麻酔を行います。
Step2
メスで切開します。
Step3
内容物を排出します。
Step4
腫瘍を一塊に摘出します。
Step5
dog earを作らないように紡錘形に切開ラインをデザインします。
Step6
十分に止血を行い、創部の閉創を行います。
症例
粉瘤の症例を術前と術後の写真を紹介しております。粉瘤は様々な原因があり、人によって粉瘤の見た目も異なります。「粉瘤かな」と疑ったらまずこちらのページを参照して見てください。また術後どうなるのかも見ていただくことができます。
術後1か月の経過
1か月でも傷は目立たなくなってきますが、傷は3か月から6か月の経過で更に目立たなくなります。
手術までの流れ
電話またはインターネットからお取りください。
術後
術後はガーゼを貼って帰宅します。
毎日ガーゼを交換して頂き、ガーゼが汚れなくなったらテープを張って頂きます。1~3日はガーゼが出血で滲みます。ガーゼ交換の際にシャワーで傷を流して頂いても大丈夫です。お風呂は抜糸までは避けて頂いた方が感染を防ぐことが出来ます。
傷は2~3週間で硬くなりますが、徐々に柔らかくなります。体質によっては肥厚性瘢痕やケロイドになる場合があるため注意が必要です。
副作用
大きさにもよりますが切開した部位の傷跡が全く残らないということはありえませんが、できるだけ目立たない方法で行います。なお手術当日と翌日の飲酒・運動、手術当日の入浴は、出血の可能性があるため控えて下さい。また処方薬でのアレルギー症状など副作用がある方もおられます。また再発のリスクもあるため、注意深く手術を行います。
粉瘤の治療にかかる費用
露出部(顔、首、肘から指先まで、膝から足先まで)の場合、切除した粉瘤の直径の合計
切除した粉瘤の直径の合計 | 3割負担の場合 | 1割負担の場合 | 別途費用 |
---|---|---|---|
2cm未満 |
5,000~6,000円程度 |
2,000円程度 |
診察料・処方料 |
2cm〜4cm未満 | 11,000~12,000円程度 |
4,000円程度 |
|
4cm以上 | 13,000~14,000円程度 |
4,500円程度 |
※お支払いは現金のみとなります。
非露出部の場合(露出部以外)
切除した粉瘤の直径の合計 | 3割負担の場合 | 1割負担の場合 | 別途費用 |
---|---|---|---|
3cm未満 |
4,000〜5,000円程度 |
1,500円程度 |
診察料・処方料 1,000円程度 検査費用 1,000円程度 病理検査費用 3,000円程 |
3cm〜6cm未満 | 10,000〜11,000円程度 |
3,500円程度 |
|
6〜12cm未満 | 12,000〜14,000円程度 | 4,500円程度 | |
12cm以上 |
25,000円程度 |
8,000円程度 |
※お支払いは現金のみとなります。
粉瘤(アテローム)の原因
粉瘤が発症する原因
粉瘤は皮膚の下に袋状のものができて、そこに垢や皮脂などの老廃物がたまった良性腫瘍です。
ヒトパピローマウイルスの感染や皮膚にできた外傷など、原因がはっきりわかることもありますが、こうしたケースは稀で、ほとんどは原因が明らかになりません。
体質的に粉瘤ができやすい方もいらっしゃいます。複数の粉瘤ができるケースもあります。放置するとどんどん大きくなってしまったり、独特な臭気を発するようになったり、細菌感染などにより炎症を起こすことがあります。サイズが大きくなると綺麗に治すことが困難になるため、できるだけ早い段階で受診することをおすすめしています。
炎症を起こす理由
粉瘤は炎症を起こして赤く腫れ、痛みを起こすことがあります。これまで炎症は主に細菌感染が原因で起きているとされていましたが、そうではない理由で炎症が起こるケースがアメリカで報告されています。
粉瘤は皮膚の下に袋状の嚢胞ができて中に老廃物がたまった良性腫瘍ですが、圧力によってこの嚢胞がつぶれて老廃物が皮膚内部に広がり、それによって炎症反応が起こっているというものです。そして、このタイプの炎症は細菌感染で起こるものよりも多いことがわかってきています。
細菌感染による炎症ではない場合、抗生物質を使っても思うような効果は得られません。そのためこうした場合には速やかな手術が必要になります。ただし、細菌感染が合併することも考えられるため、抗生物質の処方を行うこともあります。
粉瘤はできるだけ早く摘出手術を
皮膚にできる良性腫瘍は、ニキビ、おできに並んでよくある疾患です。ただし、ニキビやおできなど他の良性腫瘍と大きく異なるのは、手術でしか根治できないという点です。放置してもよくなりません。無理に潰すと炎症リスクが上がってしまいます。大きくなってしまうと綺麗に治すことが困難になりますので、独特の臭気を発するようになることも珍しくありません。
皮膚にしこりのようなものが触れたら、それ以上触らずにできるだけ早く摘出手術を行うことをお勧めいたします。
粉瘤(アテローム)の症状
初期の粉瘤は見た目の変化がないため、触れにくい場所にできた場合には気付かないケースがよくあります。しこりのようなものに触れた場合も、ニキビだと勘違いされることが多いです。粉瘤は中の老廃物が時間経過とともに増えていき徐々に大きくなっていくことがあるため、そうなるとニキビとは違うとわかります。
粉瘤による痛みについて
粉瘤が細菌に感染すると化膿して痛みを起こすことがあります。排膿処置と抗生物質によって炎症は解消できますが、粉瘤は薬物療法で治すことはできません。
粉瘤の袋状の組織は残るため炎症を繰り返し起こす可能性があります。粉瘤を治療するためには、皮膚の下にある袋状の組織を綺麗に除去する摘出手術が必要です。
炎症が強くなると腫れが大きく広がってしまうことがあるため、痛みが現れたら早めに治療を受けるようおすすめしています。
当院の特徴
特徴1:診察した上で手術を決定します
まずは粉瘤であるかどうかを判断するために診察を行います。診察の結果をお伝えして、必要な治療についてご提案します。患者様のお考えを伺いながら治療方針を決めていきます。
粉瘤の手術は外来で受けることができ、体へのご負担も少ないものですが患者様にとってはご不安があって当然です。
また手術後の傷の治りなども気になると思います。当院では、患者様がご自分に適した治療方法を選択できるよう、そして不安なく治療を受けていただけるように事前のご説明を大切に考えています。
特徴2:痛みを抑えた手術
手術では局所麻酔で痛みを軽減させています。局所麻酔を注射する際の痛みにも配慮し、極細の針を使用・薬剤の配合にも工夫するなどの対応を行っています。
特に痛みを苦手とする方には、個別の対応も可能です。痛みをなくすためのさまざまな方法をご提案できますので、安心してご相談ください。
特徴3:入院が不要の日帰り手術に対応しています
当院では、基本的に粉瘤の摘出手術を日帰りで行っています。炎症性の粉瘤に対しても当日手術を行っています。
また事前診療で炎症の有無・粉瘤の大きさや数などによって、日帰り手術が可能かどうかを慎重に判断しています。
手術で全身麻酔を必要とする場合、また悪性の腫瘍である可能性がある場合などでは当院と提携している大学病院などをご紹介させていただきスムーズな治療を受けていただけるようにしています。
特徴4:粉瘤手術は保険適用
粉瘤の治療にあたっては、検査、診断、手術、病理検査といった一連の診療にはすべて健康保険が適用され、公費などもすべて適用されます。
また個人で医療保険に加入されている場合、契約内容によっては手術給付金を受けられる場合もありますので、事前に加入している保険内容を保険会社にご確認ください。