脂肪腫は、脂肪の塊が皮膚の下にできる腫瘍のことです。
主に首や背中などにできやすいと言われていますが、腕にもできる腫瘍です。
痛みがないケースが多く気付きにくいですが、腫瘍部分が大きくなると違和感や生活に支障をきたすことがあります。
そのため腕に腫瘍ができた際は、早めに専門医に相談しましょう。
脂肪腫とは?
脂肪腫とは柔らかい腫瘍であり、脂肪がある部位であればどこにでもできます。
ここでは、脂肪腫の症状と原因について解説します。
脂肪腫の症状
脂肪腫は、皮膚の下にできる柔らかいしこりです。
大きさは、小さいものだと数ミリ程度から10センチを超えるものまで様々です。
そして、基本的には痛みが伴わない腫瘍です。
見た目は、皮膚が少し盛り上がったように見え、しこり部分は弾力があります。
脂肪腫の表面は膜に覆われており、皮膚の色に変色することがなく、肌の色と同じ色をしていることが多いです。
また、皮膚との境目がはっきりしていることが、大きな特徴です。
ほとんどの方が自覚症状はなく、日常生活に影響を与えることはほとんどありませんが、手術での摘出が唯一の治療法です。
脂肪腫の原因
脂肪腫の原因は、現段階では判明していません。できやすい人には、いくつかの特徴があると考えられています。
まず、糖尿病や肥満、高脂血症を患っている人に多い傾向があります。
また、ケガなどの外傷が関与している可能性も示唆されています。
若年層の方よりも40代、50代の方に多く、女性に多いと言われています。
さらに、遺伝的要因が関係する多発性の脂肪腫も存在します。
そのため、脂肪腫を予防するためには、食生活や生活習慣に注意を払うことが重要です。
規則正しい生活を心がけることで、脂肪腫リスクの軽減が期待できるでしょう。
脂肪腫は腕にできる?発症部位について
脂肪腫は、体のどこにでもできる可能性があるため、腕にもできる腫瘍です。
特に発生しやすい部位としては、背中や首、肩、太もも、腕、おしりなどが挙げられます。
これらの部位は脂肪が多く、皮膚の下に柔らかいしこりができやすい傾向があります。
腕も脂肪腫が発生しやすい場所の一つと言われており、腕の中でも二の腕部分に現れることがよくあります。
また、脂肪腫は頭皮や顔、足などの部位にできることもありますが、発生頻度としては低いです。
腫瘍が大きくなると目立つことがありますが、通常は無害であるため、日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。
ただし、脂肪腫が大きくなりすぎたり、痛みを感じる場合は専門家の診察を受けましょう。脂肪腫は予防することが難しい腫瘍ですが、早期発見と治療で安心して過ごせます。
腕にできる脂肪腫と似た腫瘍
腕にできる腫瘍としては、脂肪腫だけでなく様々な疾患があります。
ここでは脂肪腫と似ている腫瘍について解説します。
見た目 | 粉瘤 | ガングリオン | 神経鞘腫 | 滑液包炎 | 血管脂肪腫 |
---|---|---|---|---|---|
見た目 | 白や肌色のしこり (開口部に黒い点) |
ポコっとした コブのような できもの |
コブのよう (多くは3cm以下) |
赤みを 帯びた腫れ |
多数のちいさな しこり |
粉瘤
粉瘤は、別名アテロームとも呼ばれる腫瘍で、皮膚のすぐ下にできるしこりです。
全身のどの部位にもできる可能性がありますが、特に顔や首、背中にできやすいです。
皮膚の下に老廃物が溜まることで、徐々に大きくなりますが、自然に消えることはほとんどありません。
初期の段階では無症状で、白色や肌色の見た目をしており、開口部に黒い点が現れるのが特徴です。
治療をせずに放置していると、肥大化や悪化、炎症を起こすことがあるため注意しましょう。
炎症が起きると、激しい痛みや赤み、腫れなどの症状が出るケースがあります。
また手術した際に、傷跡が残りやすいことや、体へのダメージが大きいことなど、様々なリスクも考えられるため、早めの治療を推奨します。
粉瘤についてはこちらの記事で詳しく解説しております。
ガングリオン
ガングリオンとは、手や足にできやすいコブ状の腫瘍ですが、体のどこにでもできます。
コブの中には滑液や関節液がゼリー状になって溜まっています。
ほとんどが良性腫瘍になるため、心配する必要は少ないです。
通常は無症状で、柔らかいものから硬いものまでありますが、神経を圧迫すると痛みやしびれ、手足の動かしにくさを感じる人も多いです。
無症状の場合はそのまま放置しても問題ないことが多いですが、早めに医師に相談するほうが安心です。
神経鞘腫
神経鞘腫は、神経の鞘から発生する良性の腫瘍で、多くは3cm以下と小さめです。
皮下組織や筋肉などに発生することが多く、皮膚の表面に近い場合はこぶのように見ることもできます。
発生部位によって症状が異なり、皮膚の深い部分にできると、神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こすことがあります。
神経鞘腫のできる場所によって診察科が異なりますが、皮膚の表面に症状が出た場合には、形成外科や皮膚科で診察できます。
滑液包炎
滑液包炎は、肩関節に最も多く発生しますが、肘や股関節、膝、かかとなどにもよく見られます。
関節と骨の間にある滑液包という袋状の組織が炎症を起こし、腫れや激しい痛みを伴うことも多いです。
また、炎症部分が熱を持ち、赤くなることもあります。滑液包炎は、押すと痛みを感じるのが特徴で、超音波検査や注射器で液体を採取することで診断が行われます。
血管脂肪腫
血管脂肪腫は、腕や体幹にできやすい腫瘍で、直径1cm程度の小さなしこりです。
特徴は、腫瘍の数が多数できる点です。
そして脂肪腫に比べると小さく、硬いです。
しこりの境界ははっきりしており、痛みがある場合や押すと痛みを感じる人もいます。
血管脂肪腫の治療は手術のみになりますが、比較的簡単な手術となっています。
しかし、ほとんどの方が多数の腫瘍ができているケースが多いため、数が多いと治療は難航する傾向があります。
治療法について
ここでは、治療法について説明します。
粉瘤 | ガングリオン | 神経鞘腫 | 滑液包炎 | 血管脂肪腫 | |
---|---|---|---|---|---|
吸引 | ✕ | ◯ | ✕ | ◯ | ✕ |
手術 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
吸引による治療
吸引による治療では、腫瘍に注射針を刺して溜まった不要物を吸引して排出します。
この方法では、滑液包炎やガングリオンの治療に採用されることが多いです。
症状の状態によっては、複数回の吸引が必要になることもあります。
また、再発するリスクもあるため、医師と相談して適切な治療法を選択しましょう。
手術
脂肪腫、粉瘤は、手術による摘出が一般的です。
手術前に必要な検査を行い、腫瘍の発生場所や大きさなどを詳しく鑑別します。
症状によっては、日帰りの手術も行うことが可能です。
手術後は、傷跡が目立たないようにデザインされ、術後のケアが行われます。
術後は傷跡をきれいに治すためにも、飲酒や激しい運動、アルコールを避け、医師の指示に従うようにしましょう。
手術の内容についてはこちらの記事で詳しく解説しております。
脂肪腫の治療は形成外科がおすすめ
腕にできた脂肪腫の治療を考える際、どの科を受診すればいいのか悩む方が多いかもしれませんが、形成外科がおすすめです。
形成外科とは、体の表面にできる腫瘍を手術で治療する専門分野です。
特に外見の改善と機能の回復に重点を置いているため、傷跡が目立ちにくいのが特徴となっています。
そして、脂肪腫のような切除手術では、傷跡をできるだけ目立たせないように工夫が施されるため、美しい仕上がりを目指すことができます。
形成外科の専門医は、腫瘍の大きさや位置、患者の希望に応じて最適な治療方法を提案し、手術後の見た目と機能の両方を回復させることに努めています。
手術だけでなく、専門医による丁寧な審査で、患者が安心して治療に臨める環境が整っています。
一方で、手術を伴わないニキビなどのできものの治療は皮膚科でも可能です。
まとめ
脂肪腫は、皮膚の下にできる脂肪の塊で、主に腕や背中、首に発生しやすい腫瘍です。
痛みを感じないことが多く、気付きにくい場合も多いです。
腫瘍が大きくなったり痛みが生じたりすると、生活に影響を与えることがあります。
そのため、違和感を感じた際は、早めに医師へ相談することをおすすめします。
当院は、傷跡が目立ちにくい仕上がりと再発のリスクが少ない治療を提供しています。
腕や体にできた脂肪腫や腫瘍は、当院にご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。