「脂肪腫の治療にはどんなものがあるか知りたい」
「手術後にドレーンって使わないといけないの?」
「ドレーンを使用するときの注意点はある?」
脂肪腫の手術後、「ドレーン」と呼ばれる管上の医療器具の管理が必要になる場合があります。
治療に使われるドレーンの役割や管理方法について理解を深めることが大切です。
この記事では、ドレーンに関する基本情報と術後のケア方法について詳しく解説します。
安心して治療を受けるためにも、ぜひ最後までご覧ください。
脂肪腫とは
脂肪腫は、脂肪細胞が異常に増殖してできる良性の腫瘍です。
通常、皮膚の下にでき、触れると柔らかく、動かせるしこりとして感じられます。
形は円形や楕円形をしており、大きさは数センチから10センチ以上になることもあります。
脂肪腫はゆっくりと成長する傾向がありますが、急激に大きくなる場合は悪性腫瘍の可能性もあるので、医師に相談することが重要です。
基本的には痛みを伴いませんが、脂肪腫が神経や血管を圧迫すると、軽い痛みや不快感が生じることがあります。
脂肪腫は通常、健康に大きな問題を引き起こすことはありませんが、症状が気になる場合や大きく成長する場合は、医師に相談し、適切な治療を受けましょう。
脂肪腫の治療法
脂肪腫の治療法は、症状や患者さんの状態によって異なります。
以下に代表的な治療法を3つご紹介します。
診察と経過観察
痛みなどの症状がない、または軽度である場合は、診察し脂肪腫であると診断されると経過観察が推奨されます。
そして、定期的な検診で大きさや状態を確認し、変化があれば早期の対応がおすすめです。
手術
脂肪腫が大きくなったり、痛みや圧迫感を感じる場合は、手術で摘出することが一般的です。手術は通常、局所麻酔または全身麻酔で行われます。
局所麻酔をして、しこりの周囲だけ切開して脂肪腫を取り出す手術の場合、日帰りが可能です。
一方で、全身麻酔が必要な手術では、より複雑な手術になることがあり、場合によっては入院が必要になることもあります。
脂肪吸引
一部のケースでは、脂肪吸引技術を用いて脂肪腫を取り除くことが可能です。
これにより、小さな傷での摘出が可能で、回復が早い場合があります。
しかし、再発防止の観点からは推奨されていません。
脂肪腫の治療方法は、患者さん一人ひとりの症状や健康状態に応じて最適なものが選ばれます。
医師に相談し、適切な治療法を選択することが大切です。
脂肪腫の手術に使われるドレーンとは
ドレーンとは、体内に溜まった血液や体液などを、体外に排出するために使用する管やフィルム状の医療用品のことで、誘導管とも呼ばれています。
脂肪腫の手術で使用されるドレーンには、様々な役割があります。
ここでは、手術での使用方法や目的、管理方法について詳しく解説していきます。
まずは、手術の手順とドレーンを挿入するタイミングについて見ていきましょう。
手術の手順
脂肪腫の手術手順は以下の通りです。
手順 | 説明 |
---|---|
準備 | 手術前に、患者さんの健康状態を確認し、必要な検査を行います。これには血液検査や画像診断が含まれます。 |
麻酔 | 手術中の痛みを感じないように、局所麻酔または全身麻酔を行います。麻酔の種類は、脂肪腫の大きさや位置、患者さんの希望に応じて決定されます。 |
切開 | 手術部位を消毒し、脂肪腫の上の皮膚を小さく切開します。切開の大きさは脂肪腫の大きさに応じて決まります。 |
摘出 | 脂肪腫を包む被膜ごと慎重に取り除きます。これにより、脂肪腫の再発リスクを減少させます。 |
ドレーンの挿入(必要な場合) | 手術中に血液や体液が溜まることが予想される場合、ドレーンを挿入します。ドレーンは、体液の排出を助け、感染を防ぐために使用されます。 |
縫合 | 脂肪腫を取り除いた後、切開部を丁寧に縫合します。必要に応じて、ドレーンの出口部分も固定します。 |
術後のケア | 手術後、ドレーンの管理や傷の手入れについて指導を行います。ドレーンが適切に機能しているか、体液が正常に排出されているかを確認します。 |
ドレーンの取り外し | 術後1~2日で取り外しを行います。固定糸を抜糸してドレーンを引き抜きます。 |
ドレーンの役割
脂肪腫のドレーンは、手術後に脂肪腫を切除したあとの空洞に、血液や体液が溜まるのを防ぐ役割があります。
細い管であるドレーンを挿入することで、空洞に溜まる体液やガスを排出できます。
空洞に溜まる体液を排出することで、腫れや圧力を軽減し、回復を促進します。
また、体の中に体液が滞留すると細菌の繁殖を招き、感染のリスクを高めるため、ドレーンを使用することで体液を排出し、感染を防ぎます。
手術中に出血があった場合、ドレーンを使って血液を除去することも目的の1つです。
空洞に血腫が溜まらないようにします。
ドレーンの取り外し
ドレーンは医師の指示のもと、適切な手順でドレーンを取り外します。
ドレーンを固定している縫合やテープを外し、ゆっくりとドレーンを引き抜きます。その後、傷口を消毒し、必要に応じて縫合します。
このとき、医師からの「取り外してもいい」という許可が必要です。
手術後のドレーンの注意点
手術後のドレーンの取り扱い方について解説していきます。
ドレーンが必要になった際は、以下のことに気を付けましょう。
ドレーンの管理
ドレーンは手術後、外すまでは患者自身で管理しなければなりません。
ドレーンの管理には、排出量の記録やドレーンバッグの交換、清潔に保つことが必要です。
具体的には、医師が回復状況を判断するため、ドレーンから排出される体液の量を定期的に確認し、記録します。
また、バッグの交換は、ドレーンバッグが満杯になった場合や医師の指示があった場合に清潔なバッグに交換します。
感染症の予防
ドレーンの挿入部位と固定している周囲を清潔に保つことが感染症防止の観点から重要です。
しかし、ドレーン挿入中の手術痕は濡らしてはいけません。そのため、定期的に消毒を行います。
また、傷口を毎日チェックし、赤み、腫れ、膿、痛みなどの感染兆候がないか確認しましょう。
経過観察と再発防止
手術後は、定期的に医師の診察を受けることが重要です。
これにより、再発の早期発見が可能となります。また、医師が経過を確認し、必要な場合には追加の治療や対応が行われます。
そのうえで、脂肪腫の再発を早期に発見するために、自分で定期的に体をチェックする習慣をつけましょう。
その他にも再発を防止するためには、健康的な生活習慣や体重管理が重要です。
健康的な生活習慣とは、適度な運動やバランスのいい食事を取ることを指し、新陳代謝を促進し、免疫力を高めることに繋がります。
脂肪腫は、肥満になると脂肪腫発生のリスクを高めるため、運動や食事に気を付けることによって、適正体重を維持することが再発防止になります。
まとめ
本記事では、脂肪腫の手術におけるドレーンの役割や管理する上での注意点について解説しました。
ドレーンは、脂肪腫を切除した際にできた空洞にガスや体液が溜まらないようにする管で、自分で管理する必要があります。そのため、脂肪腫の手術を受ける際は、ドレーンの使用について理解しておきましょう。
当院では、麻酔や器具などを含めた手術について分かりやすく伝えることを意識しています。
また、痛みを大幅に軽減し、傷跡も目立たなくなるように、細部に気を配った手術を心掛けています。
脂肪腫が再発して手術に悩んでいる方は、当院にご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。