脂肪腫は、体のあらゆる部位にできる可能性がある疾患です。稀に、顔や目の周りにできることもあります。
また目にできる腫瘍は、脂肪腫だけでなく他の疾患も考えられます。
本記事では、脂肪腫について詳しく解説するとともに、目にできる疾患の症状や治療する診察先、そして治療方法について詳しく解説します。
目の周辺に異常を感じた場合は、視界への影響や美容的観点からみても、早期の治療を推奨します。
脂肪腫について
ここでは、脂肪腫の原因と症状について詳しく解説します。
脂肪腫ができる原因
脂肪腫の原因については、明確には判明していません。
しかし、できやすい人にはいくつかの特徴があると言われています。
特に、肥満の方や糖尿病、高脂血症などを患っている人に多い傾向があります。
また、ケガなどによる外傷が関係しているとも考えられています。年代別で見ると、40~50代に多く、男性より女性の方が多いです。
※ストレスなどの心理的要因はなく、脂肪腫の発生に直接影響を与えることは少ないとされています。
脂肪腫の症状
主な症状としては、皮膚の下に柔らかいしこりができることです。
このしこりは、数ミリから10センチ以上の大きさまでさまざまですが、通常は痛みを伴いません。
皮膚は少し盛り上がっており、しこり部分を触ると弾力があり、柔らかいです。
脂肪腫の表面は膜に覆われており、淡い黄色や橙色をしています。
そして、皮膚との境界がはっきりしてることが特徴です。
多くの場合、ニキビといった他の症状に間違えられる事が多く、自覚症状がないまま肥大化することがあります。
悪化(肥大化)したり、破裂することが無ければ、日常生活に影響を与えることはほとんどありません。
脂肪腫について、動画でも詳しく解説しております。
脂肪腫は目にできる?発症部位について
脂肪腫は脂肪が存在する部位であれば、どこにでもできる可能性があります。
特に肩や背中、首といった部分に多く見られます。
また腕やおしり、脚などの部位にも発生しやすいです。
稀に「目」にも脂肪腫ができます。
目にできた脂肪腫は「結膜脂肪腫」と呼ばれ、眼球の後ろ側にある脂肪が前に押し出されることで発生します。
これらの部位の脂肪腫は、基本的に柔らかくて痛みがないしこりですが、腫瘍部分が大きくなることもあります。
稀に顔や頭皮にもできることがありますが、同様に痛みがないことが特徴です。
脂肪腫は良性腫瘍の場合が多いため、健康に重大な影響を与えることは少ないでしょう。
しかし、美容的観点や不快感、日常生活に支障をきたす恐れもあるため、早めに医師に相談することをおすすめします。
目にできる脂肪腫に似たできもの
目にできるできものは、様々な種類の病気があります。
そして脂肪腫と見た目が似ており、自己判断が難しい場合も多いです。
ここでは、脂肪腫と間違われやすい目のできものについて解説します。
麦粒腫 | 霰粒腫 | 粉瘤 | 結膜脂肪腫 | |
---|---|---|---|---|
痛み | あり | なし | なし | なし |
できる部位 | まぶた | まぶた | 全身どこでも | 目の結膜 |
麦粒腫
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)は、「ものもらい」とも呼ばれる、まぶたの炎症によるできものです。
主な原因は細菌感染で、初期症状としては、まぶたが赤くなり、痛みを伴うことが多いです。
そして、小さな腫れができることや、涙が出やすい、異物が入ったような違和感を感じることがあります。
腫れた部分は数日で破れて膿が出ると、症状が改善していきます。
麦粒腫は、感染場所によって外麦粒腫と内麦粒腫の二種類に分類されます。
外麦粒腫はまつ毛部分の感染、内麦粒腫はまぶたの内側に感染するものです。
痛みや症状は、内麦粒腫の方が強く現れることが多いと言われています。
霰粒腫
霰粒腫(さんりゅうしゅ)は、まぶたにできる硬めのしこりで、基本的に痛みを伴いません。
しかし、急に炎症を起こすと痛みが出ることがあるため、麦粒腫と間違われやすいです。
霰粒腫は、目の油を分泌するマイボーム腺が詰まることで、分泌物が溜まります。
そして無菌性の炎症を引き起こして、しこりができます。
初期の段階では、まぶたが腫れたり違和感を感じますが、症状は数日で治まることがほとんどです。
粉瘤
粉瘤は皮膚の下にできる腫瘍で、顔や耳の後ろ、背中などにできやすいです。
大きさは1mm程の小さなものから数センチ程まで様々で、痛みは基本的にはありません。
目にできる場合は、まぶたや目のふちなどにできることが多く、メイク残りや細菌の感染など、不衛生な環境が関係しています。
粉瘤は皮膚と同じ色で、しこりの中心部分に黒い点があることが大きな特徴です。
そして放置すると徐々に大きくなり、自然に小さくなることはありません。
悪化すると感染や炎症を引き起こし、視力の低下や視界不良などの影響を及ぼす可能性があるため、早期治療が推奨されています。
結膜脂肪腫
結膜脂肪腫は、目の結膜部分にできる脂肪の腫瘍です。
眼球の後ろにある脂肪が前方に出てくることで、腫瘍となります。主に中高年に発生しやすく、良性であることがほとんどです。
症状として、結膜に白い盛り上がりのような塊ができ、目に異物感を感じる人がいます。他にも視界が狭くなり、目が見えづらいと感じる人や、充血することがあります。
脂肪腫を放置した場合のリスク
脂肪腫は良性腫瘍のケースが多いため、命に関わることはありません。
しかし、放置しているといくつかのリスクがあります。
まず、脂肪腫は自然に小さくなることはなく、徐々に大きくなっていきます。
そして、肥大化した腫瘍は手術時のリスクが高まる可能性があります。
また、手術後の傷跡が目立つ場合や、手術が難しくなることがあります。まれに悪性の可能性も否定できないため、治療が遅れることで命の危険性も高まるでしょう。
そのため脂肪腫が疑われる場合は、自己判断による放置はせずに、早めに医師に相談することをおすすめします。
目のできものは何科を受診する?
目のできものには、眼科や形成外科、皮膚科が推奨されます。
症状によって、受診すべき診察科が異なるため、それぞれの特徴について解説します。
眼科 | 形成外科 | 皮膚科 | |
---|---|---|---|
結膜脂肪腫 | ◯ | ✕ | ✕ |
麦粒腫 | ◯ | ✕ | ✕ |
霰粒腫 | ✕ | ◯ | ◯ |
粉瘤 | ✕ | ◯ | ◯ |
眼科
眼科は、目に関する全ての症状を専門的に診療する科です。
例えば、目の違和感やできもの、痛み、充血などの症状が現れた場合は、眼科がおすすめです。
たとえ些細な症状であっても、普段と違う見え方や異常を感じたら、早めに眼科で診察を受けることが重要です。
時に重大な病気が潜んでいる可能性も否めないため、専門医に相談しましょう。
形成外科
形成外科は、身体の表面に発生する異常や傷などを専門に扱っており、見た目や機能面を改善する診療科です。
そのため、目のできものや見た目に悪影響を与える、目の周囲に腫瘍や傷ができた場合には、形成外科での治療が適しているでしょう。
形成外科では、ケガや腫瘍、先天異常などを治療しており、傷跡や異常な部分をできるだけ目立たなく治療することに長けています。
できものの摘出による傷跡が気になる方は、形成外科に相談するといいでしょう。
皮膚科
皮膚科は、皮膚に生じる病気全般を診察・治療する診療科です。
皮膚全般を専門としているため、頭から顔や手足、耳、目、鼻、口の中など、肉眼で見える部分が診察の対象となっています。
他にも、爪や毛髪の病気についても皮膚科が専門です。
皮膚科医は、皮膚に関する専門的な知識を持っているため、全身の皮膚に関する幅広い理解があります。
そのため、目のできものがまぶたや目頭、目の周辺の皮膚に関係している場合は、皮膚科を受診するのが最適と言えます。
治療法
治療法としては、大きく分けて二つの方法があります。ここでは、それぞれの治療の内容について解説します。
薬の服用
目のできものが脂肪腫の場合、薬による治療はできませんが、他の病気であれば薬が有効な治療法となることがあります。
目の炎症を抑えるためには、ステロイドの眼軟膏をまぶたに塗ったり、抗炎症剤や抗生物質を内服するのが一般的な治療法です。
また病状によっては、点眼薬だけで様子を見ることもあります。他にも、必要に応じて眼軟膏や内服薬を併用することもあります。
手術
脂肪腫の治療法としては、手術による摘出が一般的です。
手術では、脂肪腫を切開して、腫瘍部分を全て取り除いていきます。
脂肪腫は自然に消えることがない病気で、内容物が液体ではないため、注射器などで中身を吸い出すことができません。
そのため、治療法としては手術による摘出の一択となっています。
脂肪腫の細胞が残ってしまうと、再発の可能性もあるため、手術で細胞部分を全て摘出することが重要です。
まとめ
脂肪腫は体の様々な部位に発生する可能性があり、目の周りにもできることがあります。また、目のできものは脂肪腫以外にも、類似疾患が多いため注意が必要です。
目の周辺に異常を感じた場合、視界や美容の観点からも早めの治療をおすすめします。
当院は、形成外科医による専門的かつ特殊な縫合により、傷跡が残りにくい手術を行っています。日帰りでの手術も行っていますので、違和感を感じた際は当院をご利用ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。