脂肪腫が硬い場合の対処方法は?他の疾患の可能性や違いも解説

「皮膚に硬いできものができたけど何だろう?」このような疑問をお持ちの方はいらっしゃいませんでしょうか。

脂肪腫は基本的に柔らかい腫瘍であるため、皮膚にできた腫瘍が硬い場合には、他の皮膚疾患の可能性があります。今回は、皮膚疾患に詳しい形成外科医が脂肪腫との見分け方や治療について詳しく解説します。

脂肪腫は基本的に柔らかい腫瘍であるため、皮膚にできた腫瘍が硬い場合には、他の皮膚疾患の可能性があります。

脂肪腫は柔らかいことが特徴

脂肪腫は皮膚の下に発生する良性の腫瘍であり、その柔らかさが特徴です。

脂肪腫は、軟部腫瘍の中で最も頻度の高い良性腫瘍で、通常は痛みを伴いません。皮膚がドーム状に盛り上がり、触ると柔らかいしこりとして感じられます。

脂肪腫の大きさは、数ミリ程度の小さなものから、直径10センチ以上の大きなものまでさまざまです。これらは一般的に痛みを伴わないため、日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。

脂肪腫は柔らかく、痛みを伴わない場合が多いですが、医療機関で適切な診断と治療が必要です。

マッサージをすると硬くなる

脂肪腫にマッサージを施すのは避けましょう。

脂肪腫に触れたりマッサージをすると刺激が加わり、組織の破壊と治癒の繰り返しで組織が瘢痕化(はんこんか)し、硬くなるからです。

瘢痕化した脂肪腫は、周囲の組織と癒着しやすくなり、手術が難しくなる可能性があります。また、術後に血腫ができるリスクも高まります。

脂肪腫に対する過度なマッサージは避け、適切な治療を受けることが重要です。

悪性の場合もあるので注意が必要

硬い脂肪腫は、悪性の可能性があるため注意が必要です。

特に脂肪腫と間違えやすい悪性腫瘍として「脂肪肉腫」が挙げられます。脂肪肉腫は悪性腫瘍のため、放置せずに早急な処置が必要です。脂肪腫と異なり中年以降に発生し、初期には痛みを伴いません。

脂肪肉腫は、初期段階では脂肪腫と同様に痛みを伴わない場合が多いですが、急速に成長するのが特徴です。見た目では脂肪腫との区別が難しいため、早期診断が重要です。

脂肪肉腫との見分け方

脂肪腫と脂肪肉腫の見分け方には、成長速度と症状の違いがあります。

脂肪腫は徐々に大きくなりますが、脂肪肉腫は数ヶ月で急速に成長することがあります。見た目では良性か悪性かを判断することが難しいため、専門医の診察が必要です。

皮膚にしこりのようなものができたにもかかわらず、自己判断し放置していると、あとで取り返しがつかない事態を招く可能性もあります。皮膚にできたしこりやおできが少しでも気になるようであれば、速やかに形成外科を受診するようにしましょう。

脂肪腫ではなく、他の疾患の可能性もある

硬いしこりがある場合、脂肪腫ではなく他の疾患の可能性も考慮する必要があります。

脂肪腫は通常柔らかいため、硬いしこりがある場合は粉瘤など、他の疾患の可能性があります。粉瘤は脂肪腫と間違われやすい腫瘍の一つです。

粉瘤とは

粉瘤(ふんりゅう)とは、皮膚の下に形成される嚢胞(のうほう)の一種であり、皮脂や角質がたまることで発生します。

皮膚の一部が毛穴をふさぎ、皮膚内部に皮脂や角質が溜まることで形成されます。粉瘤は徐々に大きくなりますが、通常は良性であり、悪性化することはほとんどありません。

粉瘤ができやすい場所は、以下のとおりです。

  • 背中
  • 耳のうしろ

このように、粉瘤は皮脂腺が多い部位によく見られます。時間の経過とともに徐々に大きくなり、炎症を起こして赤く腫れることもあります。治療は、外科的に摘出する方法が一般的です。

粉瘤との違い

脂肪腫と粉瘤の見分け方には、見た目、硬さ、放置した場合の経過に違いがあります。

【見た目の違い】
脂肪腫は皮膚の深い層にできるため、色の変化がほとんどなく、皮膚が隆起して見えることが多いです。一方、粉瘤は皮膚表面の浅い層にできやすく、老廃物が透けて見え、全体的に青黒く見えることがあります。

【硬さの違い】
脂肪腫は柔らかくゴムのような感触ですが、粉瘤は硬く弾力があり、しこりのように感じます。

【放置した場合の経過の違い】
脂肪腫は炎症を起こすことはほとんどありませんが、粉瘤は炎症を起こし、痛みや赤く腫れることがあります。炎症を起こすと、痛みや発赤、腫脹(しゅちょう)などの症状を伴い、場合によっては開口部から内容物が体外に飛び出す場合もあります。脂肪腫の中でも、毛細血管を取り巻く血管脂肪腫の場合は、痛みを伴うケースがあるため、見極めには注意が必要です。

【できやすい年齢と性別】
脂肪腫、粉瘤ともに中高年以降に生じやすい傾向にあります。脂肪腫はわずかに女性が多い傾向がありますが、粉瘤は中年男性に多く見られ、男性は女性の約2倍の発生率と報告されています。

自分で判断するのではなく医師による診断が必要

脂肪腫かどうかの判断は自己診断ではなく、医師による診察が必要です。

脂肪腫と他の疾患を正確に区別するためには、問診、視診、触診、および必要に応じた画像検査が必要だからです。

また、以下の特徴を持つ腫瘍に関しては悪性腫瘍の可能性があるため、画像検査に加え、手術の前に腫瘍を一部取って調べる検査(生検)を行うことがあります。

  • 巨大なもの(10センチメートル以上)
  • 硬いもの
  • 急速に成長したもの
  • 痛みを伴うもの
  • 下層の組織にくっついているもの
  • 深部組織や大腿のもの

いずれにしても、脂肪腫かどうかを正確に判断するためには、形成外科など専門の医療機関で医師による診察が必要です。

脂肪腫の手術

脂肪腫の治療は、主に形成外科でおこなわれます。

脂肪腫は自然に消えることはなく、液体ではないため注射器で吸い出すこともできません。そのため、外科手術による摘出が唯一の治療法です。脂肪腫の細胞が残ってしまうと、再発するおそれがあるため、脂肪腫をかたまりごと完全に切除し、再発を防ぎます。

当院では、麻酔の痛みを軽減するために極細の針を用いるなどの工夫をしています。形成外科医が皮膚切開のデザインをおこない、手術痕をできるだけ小さくするようこだわります。手術後は必要に応じて病理検査をおこない、脂肪腫が良性か悪性かを確認します。

脂肪腫の治療に関する詳細については、以下の記事を参照してください。

治療費

脂肪腫の手術は保険適用され、費用は腫瘍の大きさに応じて異なります。具体的には、3センチ未満、3センチから6センチ未満、6センチ以上の3つのカテゴリーに分けられます。

初診料、検査、手術を含めて、大きさが6センチ以下のものは9,000円から1,5000円ほどになります。腫瘍が6センチを超えるものは17,000円ほどかかります。

脂肪腫の手術費用は保険適用されますが、腫瘍の大きさや個別の状況によって変動します。詳細は以下の記事を参照してください。

まとめ

脂肪腫は通常柔らかく、痛みを伴わない良性の腫瘍ですが、硬い場合や急速に成長する場合は他の疾患の可能性があります。

脂肪腫は柔らかいため、硬いしこりがある場合は他の疾患である可能性があります。また、悪性の脂肪肉腫の可能性もあるため、早めに形成外科などの医療機関に相談することが重要です。

当院では、超音波検査、CT検査、MRI検査などの画像検査を行い、正確な診断を心がけています。手術が必要な場合や悪性の疑いがある場合は、提携している大学病院などを紹介し、スムーズな治療を提供します。

皮膚にできたしこりやおできでお悩みの方は、当院までお気軽にご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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