脂肪腫は鼠径部にもできる?受診すべき病院や治療方法を解説

脂肪腫は、体のどこにでもできる疾患のため、鼠径(そけい)部にできることもあります。しかし鼠径部にできる疾患は、脂肪腫に限りません。他の腫瘍や病変が潜んでいる可能性もあるため、自分で脂肪腫なのかどうかを判断するのは困難です。したがって、医療機関で正しい診断を受けることが重要です。

本記事では、脂肪腫を含む鼠径部にできる疾患や受診先について解説します。鼠径部に気になるしこりができた際は、できるだけ早めに医療機関を受診することが推奨されています。健康を守るためには、早期の診断と適切な治療が欠かせません。

脂肪腫とは

脂肪腫とは、良性の脂肪組織の腫瘍です。体のどこにでも発症しますが、できやすいのは首・背中・肩・太もも・臀部などです。

脂肪腫の特徴や原因については、以下で詳しく紹介します。

脂肪腫の特徴

脂肪腫は、皮膚の下にできる柔らかいしこりで、触ると動くのが特徴です。

基本的に、痛みは伴いません。ただし、しこりが大きくなり周りの組織を圧迫すると、痛みやしびれを感じることがあります。
大きさはさまざまで、数mmの小さなものから10cmを超える大きなものまであります。単発性の腫瘍ですが、まれに複数同時にできることもあります。

脂肪腫の原因

脂肪腫が発生する原因は明確に分かっていませんが、刺激を受けやすい場所にできやすいとされています。また、脂肪腫の約80%に染色体異常が見られることから、遺伝子異常が発症に関与する可能性が高いと考えられています。

さらに、家族内で発生するケースも報告されているため、遺伝的な要因が影響を与えていることが示唆されています。

脂肪腫は鼠径部にもできる良性の腫瘍

脂肪腫は体のどこにでもできる疾患のため、鼠径部にできる可能性も十分考えられます。

鼠径部にできた脂肪腫は、見た目や触感だけでは他の腫瘍や病変との区別が難しい場合が多いです。

そのため、鼠径部に気になるしこりができた場合は、早めに医師に相談し、適切な診断を受けることが重要です。脂肪腫と似ている疾患については、後ほど詳しく解説します。

脂肪腫の治療方法

脂肪腫の治療は、外科手術による摘出が一般的です。手術では局所麻酔を用いて行い、薄い膜で覆われた腫瘍をかたまりごと切開して摘出します。
痛みがなく、日常生活に支障がなければ、放置していても問題はありません。ただし、サイズが大きくなってから手術を行うと傷口が大きくなるため、治療を希望する場合は、できるだけ早めの対応が推奨されます。また、美容的な観点からも治療を希望する方が多くいます。

なお、脂肪腫は外用薬による治療効果はなく、内容物が液体ではないため注射器などで吸い取ることもできません。自然に治ることもないため、治療を行う際は手術が必須になります。

詳しい手術内容については以下の記事で紹介しているので参考にしてください。
脂肪腫(リポーマ)の治療方法

脂肪腫が再発する可能性

脂肪腫は外科手術によって治療が行われますが、取り残しがあった場合、再発する可能性があります。脂肪腫が完全に切除されないと、残った脂肪組織が再び腫瘍を形成してしまうためです。

また、既存の脂肪腫が再発するのではなく、別の場所に新しい脂肪腫ができることがあります。再発と誤解されることがありますが、脂肪腫は複数個できる場合があるため、新たな腫瘍の発生も考えられます。

脂肪腫以外で鼠径部にできる腫瘍やしこりの種類

鼠径部にできるしこりには、さまざまな種類の疾患があります。そのため、脂肪腫かどうか自分では見分けがつかない場合もあるでしょう。
脂肪腫と間違われやすい疾患は以下のとおりです。

脂肪腫と似ている疾患 症状 大きさ
鼠経ヘルニア ・痛みのない膨らみ
・進行すると痛みや不快感がある
ピンポン玉程度
粉瘤 ・中央に黒点のある(ことが多い)腫瘤
・炎症を起こすと痛む
数mmから数cm
動脈瘤 ・基本的に無症状
・持続的な痛みを感じることもある
2cmから6cm程度
静脈瘤 ・血管が浮き出る
・むくみやだるさを感じる
数mmから数cm
悪性リンパ腫 ・無痛のしこり
・原因不明の発熱や体重減少など
数cmから数十cm

それぞれの症状について詳しく見てみましょう。

鼠経ヘルニア

鼠経ヘルニアは、腸などの臓器が外に飛び出し、鼠径部にピンポン玉程度のふくらみができる症状です。一般的に「脱腸」とも呼ばれます。

鼠経ヘルニアは放置していると症状が悪化し、腹膜炎を起こす可能性があります。命に関わる危険性があるため、早めの治療が必要です。

粉瘤

粉瘤は、皮脂や角質などの老廃物が溜まって形成される腫瘤です。体のどこにでもできるため、鼠径部にできる可能性も十分に考えられます。

粉瘤が炎症を起こすと痛みを伴い、破裂すると独特のにおいを発します。放置していると大きくなり、症状が悪化するリスクがあるため、早めの治療が望ましいできものです。

動脈瘤

動脈瘤とは、動脈の一部の壁が弱くなって膨らむ症状です。血管の機能が低下することはないため、無症状であることが多い症状ですが、持続的な痛みを伴うこともあります。

しかし、動脈瘤が破裂すると、脳梗塞や腎障害などを引き起こし、命を落とす危険性があるため絶対に放置してはいけません。早期の診断と適切な治療が重要です。

静脈瘤

静脈瘤は、血液が逆流することで血管がボコボコと浮き出て、足のむくみやこむら返りなどの症状を起こす疾患です。動脈瘤と異なり、命にかかわることはありません。

ただし、むくみやだるさなどからQOL(生活の質)が低下する可能性があります。放置していると、静脈不全や血栓ができるリスクが高まるため、早めに医師に相談した方がよい疾患です。適切な治療を受けることで、症状の改善や合併症の予防ができます。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、血液中の「リンパ球」ががん化することで発生する疾患です。

首や脇の下、鼠径部など、リンパ節の多いところに痛みのないしこりが現れ、数週間から数ヶ月の間に大きくなることがあります。

症状が進行すると、原因不明の発熱や倦怠感、体重減少、嘔吐などの症状が現れます。主な治療方法は、抗がん剤、化学療法、放射線治療の3種類です。症状に応じた治療法が選択されます。

関連記事:脂肪腫(リポーマ)と類似する疾患

脂肪腫ができたら何科を受診すればよい?

鼠径部に脂肪腫と思われる腫瘍ができた場合は、形成外科もしくは皮膚科を受診しましょう。

脂肪腫を正確に診断するためには、画像検査が必要になります。一般的に、エコー検査やCT検査、MRI検査などが行われます。脂肪腫の正確な位置や大きさを把握することで、適切な治療方針を決められます。

脂肪腫と診断され、治療を行う場合は形成外科の受診がおすすめです。形成外科は、手術を専門としているため、より適切な手術方法やアプローチを提供してくれます。

まとめ

脂肪腫は、体のどこにでもできる良性のしこりのため、鼠径部にできることもあります。

脂肪腫であった場合、命にかかわる心配はないため治療は必須ではありませんが、大きくなると周りの組織を圧迫し、痛みを感じることもあります。また、美容の観点からも早めの治療が推奨されています。

また、他の疾患の可能性もあるため、できるだけ早めに医療機関を受診することが望ましいとされています。

当院は、様々な外科治療が可能な形成外科です。傷跡が残りにくい手術を行っており、日帰り手術にも対応可能です。鼠径部に気になるしこりができた方は、ぜひ当院へご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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