脂肪腫は鼻に発症する?鼻にできやすい腫瘍と治療について徹底解説

脂肪腫は、脂肪組織からできる良性の腫瘍で、触ると柔らかくしこりを感じることが多いです。

この腫瘍は、体のさまざまな場所に発生しますが、鼻にできることは比較的少ないです。

鼻に発生しやすい腫瘍には、良性のものから悪性のものまでさまざまな種類があり、それぞれ治療方法が異なります

そこで今回は、鼻にできやすい腫瘍の種類や治療法について詳しく解説します。

脂肪腫について

ここでは、脂肪腫の概要について見ていきましょう。

特徴

脂肪腫は、脂肪細胞が増殖してできる良性の腫瘍です。
特に、背中や肩、首の後ろ、腕、太ももなどにできやすく、鼻にできることは稀です。

症状は、皮膚にドーム状のブヨブヨした柔らかい塊として発生し、基本的に痛みを伴わないケースが多いです。

大きさは数ミリから10センチ以上にも成長することがあり、自然に小さくなることはありません。時間の経過とともに腫瘍部分は大きくなっていくため、早めの治療が推奨されています。

原因

脂肪腫の原因は、明確には判明していません。しかし、脂肪腫ができやすい人の特徴や傾向があると言われています。

まず、遺伝的な要素や外傷的な要因が考えられています。ご家族の中に脂肪腫を患ったことのある方は、遺伝して発症しやすい傾向があります。また、外部からの刺激を受けやすい場所に発生しやすく、服が擦れる部位で発生することが多いです。他にも、肥満の方や女性に多い病気です。

確かな原因は明らかになっていませんが、これらの要因が関係していると考えられています。

鼻にできやすい脂肪腫に似た腫瘍

鼻にできやすい腫瘍は、いくつかあります。特に見た目が脂肪腫と似ていて、判断が付きにくいものも存在します。

ただのニキビではない可能性もあるので、自己判断せずに医師に相談することをおすすめします。

  •  ・ニキビ
  •  ・粉瘤
  •  ・鼻せつ
  •  ・稗粒腫(はいりゅうしゅ)

 

ここでは、脂肪腫と間違われやすい腫瘍、4種類について解説します。

腫瘍の種類 ニキビ 粉瘤 鼻せつ 稗粒腫(はいりゅうしゅ)
痛み なし(種類によって痛みあり) なし(炎症を起こすと痛みあり) あり なし
できやすい部位 顔、背中など 顔、首、背中、耳の後ろ 鼻の入り口付近 目元、鼻、額、頬、陰部など

ニキビ

ニキビは、鼻にできやすい脂肪腫に似た腫瘍の一つです。

皮脂が多い部分にできやすく、鼻や頬、額など様々な所に発生します。大きさは数ミリ程度の盛り上がったできもので、初期の段階では痛みを感じることはほとんどありません。しかし菌が繁殖して悪化すると、炎症や痛みを伴うニキビへと進行してしまうため、注意しましょう。

鼻の皮膚は凹凸が多く、汚れやメイクが残りやすいことから悪化しやすい傾向があります。また、鼻をよく触ったり、頻繁にかむことで刺激が加わることで、ニキビができやすい環境になってしまいます。初期のニキビであれば、市販薬でも治ることがありますが、なかなか改善しない場合は、医師の診断を受けることをおすすめします。

粉瘤

粉瘤は、皮膚に袋状の組織ができ、その中に角質や皮脂などの不要物がたまる腫瘍です。

特に皮脂分泌が多い顔や背中、首などにできやすく、鼻にもできやすいです。見た目は、皮膚が盛り上がり、中央に黒い点が見られることが特徴です。粉瘤は自然に小さくなることがなく、徐々に大きくなっていきます。そして一般的に痛みを伴いませんが、炎症を引き起こすと激しい痛みや腫れ、膿がたまってしまうケースもあります。

鼻せつ

鼻せつとは、特に鼻毛が生えている部分に細菌が感染して化膿し、うみを伴う赤くて硬いしこりです。

鼻の入り口付近にできやすく、直径数ミリ程度の痛みを伴う赤い腫れが特徴です。腫れが進行してしまうと、鼻の先端が赤く腫れ上がります。さらに悪化すると鼻づまりや頭痛など、体に様々な不調を引き起こすこともあります。

鼻せつは、感染が広がるとより重い症状を引き起こす可能性があるため、早期の治療が推奨されている病気です。

稗粒腫(はいりゅうしゅ)

稗粒腫(はいりゅうしゅ)は、顔や体のさまざまな場所にできる、白くて小さなポツポツとしたできものです。

特に目元にできやすいと言われていますが、他にも鼻や額、頬、陰部などにもできやすいです。触ると少し固く、大きさは1mm以下のものから、最大で1cmほどと比較的小さいできものになります。

稗粒腫の特徴としては、ポツポツと孤立した小さいできものであるため、他の腫瘍と区別がつきやすい傾向があります。

鼻の腫瘍は何科を受診するべき?

鼻にできた腫瘍は、症状によって受診すべき診療科が異なります。ここでは、下記の診療科について解説します。

  •  ・耳鼻咽喉科
  •  ・形成外科
  •  ・皮膚科

 

腫瘍の種類 ニキビ 粉瘤 鼻せつ 稗粒腫
耳鼻咽喉科
形成外科
皮膚科

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科は、耳や鼻、のど、頸部の病気を診断及び治療を行う診療科です。内科的治療から外科的治療まで幅広く対応しています。

鼻にできたできものはもちろん、中耳炎や花粉症、めまい、扁桃炎といった一般的な病気も相談できます。しかし、脂肪腫が疑われる場合は、耳鼻咽喉科よりも形成外科や皮膚科を受診するほうがよりスムーズに治療できるでしょう。

形成外科

形成外科は、身体の表面の見た目や機能を改善することを目的とした診療科です。

特に外見に影響を与える腫瘍やけが、先天的な異常、やけどなどを「きれいに治療できること」に強みを持っており、手術や縫合技術に優れています。顔や手足などの傷や変形をできるだけ目立たないように治療を行い、生活の質を向上させることをサポートしています。

鼻の腫瘍のように顔の目立つできものに関しては、綺麗に治療ができる形成外科の受診がおすすめです。

皮膚科

皮膚科は、皮膚や爪、毛髪などの目に見える部分の疾患を治療する専門科です。

鼻の腫瘍も皮膚科で診察が可能ですが、特に皮膚の表面に現れるできものやしこり、赤みなどの異常が見られるときにおすすめです。

皮膚科では、内服薬や外用薬を使った薬物療法が中心ですが、必要に応じて簡易的な外科的手術も行われます。鼻の皮膚にできた腫瘍の場合、初期段階では皮膚科での診察が適していますが、腫瘍の種類や大きさ、治療方法によっては形成外科が最適な場合もあります。

腫瘍の治療法について

腫瘍の治療には、主に下記の3つの方法があります。

  • ・手術による除去
  • ・外用薬の塗布
  • ・飲み薬の服用

 

それぞれの治療内容について解説します。

手術による除去

粉瘤や脂肪腫、稗粒腫などの腫瘍には、手術による摘出が一般的です。

これらの腫瘍は自然には治癒しないため、手術が必要です。メスで腫瘍のサイズに合わせて切開を行い、少しずつ腫瘍を取り出して縫合します。

腫瘍の大きさによりますが、ほとんどの場合、日帰り手術が可能です。手術による治療は、腫瘍を完全に切除することで再発のリスクを抑えることができ、根治が期待できます。特に、悪性の可能性がある腫瘍に対しては、早期の治療や摘出をおすすめします。

脂肪腫について、動画でも詳しく解説しております。

外用薬の塗布

外用薬の塗布は、鼻せつやニキビなどのできものに効果的です。特に過酸化ベンゾイルやアダパレン製剤などは、ニキビの原因菌を殺菌し、毛穴の詰まりを改善する作用があります。これにより、白ニキビや黒ニキビ、赤ニキビの改善が期待できます。外用薬は手術や内服薬など他の治療に比べて副作用が少ないメリットがあります。

しかし塗り薬でも、長期使用によって皮膚が薄くなったり、肌が荒れたりなど副作用が起こる可能性もあります。副作用を防ぐためには、医師の指示を守り正しく使用することが大切です。

飲み薬の服用

飲み薬の服用は、初期段階のニキビや鼻せつの症状緩和におすすめの治療法です。

特に抗菌薬は市販では販売されておらず、医師の診察を受けて処方してもらう必要があります。化膿したニキビには、抗菌成分を含む飲み薬が重要になるため、早めに治療を開始するようにしましょう。

また、鼻せつの治療では、抗菌薬の内服が推奨されており、蒸しタオルで温めるケアも症状緩和に有効です。飲み薬を服用しても症状が改善されない場合は、手術による摘出が必要になることもあります。

まとめ

脂肪腫は体のさまざまな部位に発生する腫瘍ですが、鼻にできることは稀です。

鼻にできやすい腫瘍としては、粉瘤や稗粒腫、ニキビ、鼻せつなど、さまざまな種類があります。治療は腫瘍の種類や大きさ、状態に応じて異なり、外用薬や飲み薬で治療できる場合もあれば、手術が必要なケースもあります。体への負担を軽減するためにも、早めの治療をおすすめします。

当院は、痛みを最小限に抑えた日帰り手術を行っております。様々な腫瘍の治療が可能ですので、肌のトラブルでお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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